2011年9月2日金曜日

余った農業用水で“小水力発電”

-----読売新聞、2011/09/01

------小水力発電ニュース------

ダム湖なしで売電も

   私の実家のある宮崎県日之影町では農業用水を利用した小水力発電所があります。小水力発電は、東日本大震災以降いろいろ取り沙汰されていますが、ネット上では「どうせ大した発電量はない」とか、「ダムを作るのに環境破壊が起きる」などの否定的な発言も多く見受けられます。うーん、これは実際の数字を知らない人の意見ですね。

   日之影発電所は、最大発電量は2300キロワットで、毎年1億2千万円ほど売電もしています。また大規模な水力発電所はダムを作るのが普通ですが、ここは農業用水路の水を利用しているため、いわゆるダム湖がありません。

   日之影町は山奥の町なので、農地は棚田や段々畑です。山の中腹にある農地を抜けて通っている農業用水路は、山の端から滝のように流れ落ち、日之影川へ注いでいました。落差は200メートルもあり、水の勢いは非常に強いものでした。落ちる水を発電に利用できるのではないか、と造られたのが日之影発電所です。1979(昭和54)年完成ですから、もう30年以上も発電しているのですね。写真を見てください。山肌から突然出ているパイプ、その上(森に隠れていますが)に用水路があり、多くの農地へ水を配分しています。その余った水が発電に使われているのです。

   管理している日之影土地改良区の方に話をうかがうと、「ここはあくまでも農業用水を優先させ、発電はその残りでやっています」とのこと。発電所に掲げられている看板には、こう書いてありました。

   「この発電所は、田に水を引くため昔の人たちが苦労して造った、通称七折(ななおれ)農業用水路の水を利用して発電しています。現在でも農家の人たちが、この水路から田に水を引いて、お米を作っています」

土砂の流入が少なく、管理しやすい利点も

   藩政時代、日之影町は水田が少なく、米の自給ができませんでした。山の上なので農業用水路を造るのも大変な難工事。何度も挫折していたそうです。山腹の悪条件を克服し、最初の用水路ができたのは1925(大正14)年のこと。その後、1927(昭和2)年にも別の水路ができ、台地に水を引いて開田することができました。お米を作ることがまず大事。その余った水で発電するなんて、水はいろんな面で何度も役に立つものなんですね!


つづき
http://otona.yomiuri.co.jp/life/ecolife/110901.htm?from=tw