2011年8月19日金曜日

小水力発電 「集落のシンボルに」

-----読売新聞、2011/08/17

------小水力発電ニュース------

コスト回収に課題も

  霊峰・白山から豊かな水の恵みを受ける郡上市石徹白
(いとしろ)集落。水田やトウモロコシ畑の間を流れる農業用水路に取り付けられた長さ3メートル、直径90センチのらせん型水車が「タン、タン、タン」と規則的なリズムを刻みながら回っている。

  水車は2009年、独立行政法人・科学技術振興機構の委託事業として設置された。出力500ワットで、月360キロ・ワットを発電する。一般家庭 の電力消費量(300キロ・ワット)の1戸余りに相当し、近くのNPO法人「やすらぎの里いとしろ」の事務所で使われる。地域おこしに取り組むこのNPO と共同で水車を設置したNPO法人「地域再生機構」(岐阜市)の平野彰秀理事(35)は「故障なしに24時間365日、発電しています」と胸を張った。
  世帯数110戸。過疎と高齢化に悩む石徹白に小水力発電の話が持ち上がったのは07年。やすらぎの里の久保田政則理事長(64)らが「水車の物珍 しさで人が集まり、将来的には集落のシンボルになれば」と考えたのがきっかけだった。今では4機の水車が動く。小水力発電は水が流れていればどこでも設置 できる。東濃5市に水道水を供給する瑞浪市釜戸町の県東部広域水道事務所は08年、水道管に直径約50センチのプロペラ型水車を取り付けた。
利用可能な水力エネルギー量の多い上位5県
水力エネルギー量開発済み
岐阜県135399025
富山県1286410452
長野県127959264
新潟県127168794
北海道100825756
※資源エネルギー庁統計(単位:GWh)
石徹白に設置された小水力発電機

  高低差22メートルある水道管に水が流れると水車が回り、一般家庭の208戸分に相当する年間75万キロ・ワットを発電する。2割を事務所で使い、残り8割は中部電力に売却する。小林勝朗企画管理課長は「利用されていないエネルギーを効果的に活用している」と説明する。
しかし、小水力発電の設置には水利権を取る必要があるなど手続きが煩雑。何よりも最大の課題はコストが見合わないことだ。
  石徹白の水車の設置費は1機200万円。1年の発電量を電気代に換算すると8万円程度で、回収に25年かかる。瑞浪の発電機は総事業費9400万 円で、新エネルギー・産業技術総合開発機構からの補助金を差し引くと5200万円。中部電力への売電収入は年460万円で、維持費の年340万円を差し引 くと、年120万円のプラス。電気代は年220万円浮くため、合わせると年340万円の収益になるが、それでも回収には15年が必要だ。
  水資源に恵まれた岐阜県は利用可能な水力エネルギー量が全国1位。石徹白小学校前のドブには、ペットボトル程度の大きさの水力発電機(最大出力5 ワット)が設置され、街灯が夜道を照らす。平野理事は力を込める。「今後、課題が克服されて設置数が増えれば、電力の一定量を安定的に賄える可能性はあ る」


  東京電力福島第一原子力発電所の事故を受け、代替エネルギーへの関心が高まっている。県内でも小水力や太陽光、風力などが利用されているが、コスト面や設置場所など普及には課題も多い。新エネルギーの現場を報告する。

続き
http://chubu.yomiuri.co.jp/tokushu/eneima/eneima110817_1.htm