2012年5月30日水曜日

(インタビュー)自然エネルギーが開く未来 NPO法人「地域再生機構」平野彰秀さん

-----朝日新聞、2012/05/29

------小水力発電ニュース------
   7月から自然エネルギーの固定価格買い取り制度が始まる。東京電力福島第一原発事故を受け、「脱原発依存」に向けた具体的な一歩だが、話は電源選択の問題にとどまらないようだ。何がどう変わりうるのか。岐阜市中心部から車で2時間、山あいの過疎地で一足先に、水車で起こした電気で地域再生に取り組む平野彰秀さんに会いに行った。

   ――NPOの一員として2007年から水車を使った小水力発電を推進してきたそうですね。
   「地域をなんとか再生させたい、という石徹白の方々の切実な願いにこたえたかった。昭和30(1955)年ごろまでは水車があり、昼は製材所の動力に、夜は集落の電気に使っていたそうだから、温故知新で地域再生のシンボルにしようと」
   「昨年3月、実働機としては三つ目の水車を設置し、電気代の負担が重くて休眠していた農産物加工所に電気を送っています。息を吹き返した加工所では夏場、特産品のトウモロコシのハネ品を使ってパウダーをつくり、半年間ですが、パート数人の雇用が生まれました。水が流れる限り、24時間365日コツコツ発電できるのが、小水力の利点です。将来的には売電も考えています」
   「地元の女性有志が特産品を使ったカフェを定期的に開くなど、水車は地元の人々の意識を動かし始めています。小水力発電の見学などをきっかけに昨年、4世帯9人が移住。うち1世帯は私と妻で、築130年の古民家に住んでいます」

   ――経歴は見事なエリートっぷりで、コンサルタント時代は年収1千万円を超えていたと。それがなんでまた? と問わずにいられません。    「よく誤解されるのですが、社会の一線から『降りた』とか『はずれた』つもりは全くありません。時代の流れは『こっち』だと思ってますから。感覚的にはベンチャーの起業家とそう変わらないかもしれない」
   「『失われた20年』で喪失したものを取り戻そうと躍起になっても、もう無理でしょう。経済成長を前提にした社会モデルに固執するのはやめて、次の社会モデルを準備した方がいい。日本が次にめざすべきは『足るを知る』社会であり、地域の特性を生かした地産地消型の自然エネルギーがカギになると思います」
   「石徹白は、まさにそういう社会だったんですよね。雪深く、隔絶された集落なので、食べ物はもちろん、衣服や道具類も手近な材料でつくってきた。そして雪解けの春を迎えるころ、『いいお天気ですね』とあいさつすると『ありがたいなぁ』と返ってくる。自らの手で暮らしをつくるからこそ、『足るを知る』ことができる。そんな地域の知恵と精神性をもとに、次の時代の社会モデルを実現させたいです」

省略

こちらの記事は、2012年05月29日 朝刊 オピニオン1 p17に掲載さています。
全文はそちらを御覧ください。朝日デジタルでもご覧いただけるようです。