・-----毎日新聞、2012/07/16
------小水力発電ニュース------
◇再生エネ、分散型で地産地消
東日本大震災と東京電力福島第1原発事故で明らかになったのは、中央集権型「エネルギーガバナンス
(統治)」のリスクの大きさだった。転換の時を迎えた今、再生可能エネルギーによる電力の「地産地消」を掲げる動きが広がる。普及までは消費者の負担が増
すが、エネルギー分散による災害への備えや疲弊する地域経済の活性化につながるとの期待も高まっている。
金沢市中心部、兼六園そばの散策
路に入ると、ゴウゴウと響く水の落ちる音が聞こえた。市は今年度、この場所の小さな滝で出力1キロワットの小規模の水力発電(小水力)を設置し、街灯に利
用する。藩政時代に張り巡らされた総延長約150キロの用水を初めて利用する再生エネ設備。電力の地産地消を進める新たな一歩と位置付ける。
金沢市は市町村レベルでは珍しい水力発電事業を続ける。郊外に保有する5基の既存中小水力発電所(計3万3000キロワット)で、北陸電力を通じて市内の
電力供給量の4・6%、4万世帯分を「自給」する。・・・
水が常に流れ込む小水力は、気候に左右される太陽光や風力より
発電効率は高い。一方、水利権調整など煩雑な法的手続きが普及の妨げとなってきた。それを克服する試みとして注目されるのが、栃木県の「スマートビレッ
ジ」構想だ。那須塩原市など隣接3市町の農村部で水利権調整を簡素化できるよう国に特区申請し、昨年末に認められた。
農業用水に
70~80の発電施設を設置し、13年度末から2000世帯分の電力の自給自足を目指す。事業主体は企画を出した農業関連コンサルタント会社と県経済同友
会などが設立する新会社。施設の規格を統一することでコスト削減も図れるという。県農村振興課は「地域に埋もれた資源を生かしたい」と話す。
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◇企業だけもうかる構造は問題 問われる地元の力
「再生可能エネルギーには、財政や雇用という自治体の課題解決を促す可能性がある。地域が主体となった再生エネ振興がポイントだ」。再生エネ普及にかかわり、多くの事例を知る舩橋(ふなばし)晴俊・法政大教授(環境社会学)は指摘する。
好例が高知県檮原(ゆすはら)町。全国で最も高地に設置された町営風力発電所(2基計1200キロワット)がある。作った電気は四国電力に売り、過去13年で年平均3140万円の収入を得た。収益は新たな再生エネ設備の導入に充てる。
一方、青森県は風力発電の導入量(設備の出力量)が全国トップだが、約200基の風車のうち95%の運営は県外資本。舩橋教授によると、同県内の風力発電
の総売電額は県の柱であるホタテ産業に匹敵する年80億円近いとみられるが、ほとんど県外に流出している。「地域資源で得た利益が還元されない植民地状
態」と指摘する専門家もいる。
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堀尾正靱(まさゆき)・龍谷大教授(環境エネルギー技術・政策)は「企業だけが利益を得る構造では制度は続かない。再生エネは地域の利益に資する形で利
用すべきで、自治体には事業モデルの確立が求められる。強い社会づくりには中央集権型から分権型へのエネルギーガバナンスの転換が欠かせない」と指摘する。
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http://news.goo.ne.jp/article/mainichi/life/20120716ddm003010141000c.html