2013年7月5日金曜日

東北巡る水力お遍路 旅企画「5年かけ全209発電所へ」/地域

・-----電気新聞、2013/07/04

------小水力発電ニュース------
 5年かけて東北電力の水力発電所全209カ所を巡ろう――。「水力版お遍路」ともいえる壮大な旅企画の第1弾が今月6日、福島県いわき市でスタート する。同市の湯本温泉を中心に開催中の体験型イベント「いわきフラオンパク」のプログラムの一つとして開かれ、約20人の有志が夏井川水系の水力発電所8 カ所や周辺の産業遺構を見て回る。発電施設を訪ねるとともに、その土地ゆかりの歴史・文化や民俗伝承をたどっていく「着地型観光」というコンセプトを打ち 出しているのが特徴だ。
◆立地地域の歴史辿る 第1弾は夏井川水系
 旅企画の名称は「東北電力209カ所水力発電お遍路の旅」。阿武隈高地を下り、いわき市を通って太平洋に流れ込む夏井川水系の夏井川第一、第二、第三水 力、鹿又川水力、川前水力などを訪ねる。6月23日~7月15日まで開かれる「いわきフラオンパク」の約40の体験プログラムの中の一つだ。
 「水力お遍路の旅」を企画したのは、名古屋芸術大学講師の井上リサさん。本業のかたわら、全国の発電施設が立地する地域への観光ツアーを企画している。 井上さんが提唱しているのが「着地型観光」。立地地域が持つ歴史・文化や民俗伝承の文脈の中で「発電施設の成り立ちを見ていく」ことが目的という。
 立地地域の「着地型観光」を企画するようになったきっかけは、一昨年の東日本大震災と、震災後の大津波を乗り切った東北電力の女川原子力発電所。東北電 力が、古文書「日本三代実録」に書かれた平安時代の貞観津波(869年)の痕跡を丹念に調べ、女川原子力の耐津波設計に生かしたことに感銘を受けたとい う。
 その思いから2012年に始めたのが、女川原子力の設計思想の“ルーツ”を訪ね、津波伝承の史跡をたどる旅。一番人気の企画に育ち、地元からの参加やリピーターも多いという。今回の「水力お遍路の旅」も、こういった着地型観光の趣旨を踏襲している。
◆東北開発は電力から 思い重ね“復興”願う
 井上さんは「水力お遍路の旅」に「復興」というテーマも強く重ね合わせている。根底にあるのは、戦後の1951~59年、白洲次郎氏が会長を務めた東北 電力が復興のスローガンに掲げた「日本の再建は東北から、東北の開発は電力から」という言葉。「その言葉が、今の震災からの復興にすごく重なる」と語る。
 「東北電力は戦後、水力で成長した会社だし、東北の水力巡りをテーマにすれば面白いと思った」と井上さん。「5年かけてお遍路をすれば、東北の復興にも寄り添えるのではないか」という。
 企画者の強い思いが詰まった「水力お遍路の旅」。定期的に続け、209カ所巡りを実現したいとしている。

電気新聞本紙より転載